どうして株を買うのが社会のためになるの?投資家軽視の政策が危ない理由

  • 2022年1月29日
  • 2022年1月29日
  • 投資

先日、会社の同僚と経済政策に関して議論になりました。

友人「オレは岸田首相の金融資産増税と賃上げを支持する。投資家に回すお金を賃上げに回せばそのお金が消費に回って経済も潤う。」

「でもそんなことしたら投資家の資金が逃げて株が暴落して会社が経ちいかなくなるから賃上げもできないよ」

友人「いや、株が暴落して損するのは投資家で会社じゃないんだから、会社の賃上げと株の下落は関係ないだろ?」

「株が下落したら会社の業績も悪くなるんだから、給料払えないよ」

友人「いやだからなんで?会社の持ってるキャッシュには株価は全然関係ないじゃん?」

「う、ぐぐぐぐ、、、」

考えてみれば、株価と会社の経営状況や資産との関係性をきちんと理解してませんでした(汗)

ということで、今度はその友人にきちんと説明すべく、私が自分で調べた内容を整理するためにこの記事を書きました。

同じような議論を職場で展開されている方の助けになれば幸いですw

結論から言うと、「会社の安定した運営に必要だから」です。

会社はキャッシュが枯渇すると倒産する

会社を運営していくにあたり、極めて重要なものが「キャッシュ(現金)」です。

一番単純な例として、商社の場合で考えてみます。

まず、商社は手持ちのキャッシュで商品を仕入れます。

仕入れた商品をさらに高値で売ります。

売って得た現金(原価+利益)を使ってまた新たに商品を仕入れます。

その商品をまた売ります。

以後繰り返し。

これが超単純化した商社のビジネスです。

しかし、何らかのアクシデント、たとえば会社のキャッシュを保管していた銀行が倒産したとします。(※話を分かりやすくするために極端な例です)

キャッシュがなくなったので会社は商品を仕入れることができません。

商品を仕入れることさえできれば高値で買ってくれる客はいます。

しかし肝心の商品を仕入れる現金がありません。

新たに商品を仕入れることができなければ、その会社はビジネスを継続することができません。

すると、どうなるか?

倒産します。

俗にいう「黒字倒産」=「利益が出ているのに現金が枯渇して倒産する」という状態です。

キャッシュというのは、ビジネスにとってそれだけ重要なものなのです。

会社が存続するためにはとにかくキャッシュ。

一にも二にも、とにかくキャッシュなのです。

そして、キャッシュが無ければ社員に給料を支払うことも賃上げすることもできないのです。

投資したい人が多ければピンチを乗り越えられる

会社を維持し、社員を養い、給料を支払っていくために、「キャッシュ」がとても大事であることはお分かりいただけたと思います。

次に、株価とキャッシュの関係性を説明します。

株価が高いということは、多くの投資家がその会社の株を欲しがっている状態です。

大抵こういう時は市場環境も良好で、会社からは給料や賞与が支払われ、従業員の生活にも大きな問題はありません。

問題が起きるのは、市場環境の変化、たとえば2020年に発生したコロナ禍のように、会社が思うようにビジネスを行うことができなくなった時です。

会社はビジネスが行えなくなったので、得られるはずだったキャッシュが手に入らなくなります。

先述の通り、キャッシュは会社の生命線です。

なんとしてでも現金を確保しなければなりません。

繰り返しますが、キャッシュがなくなれば倒産するしかないのです。

倒産すれば、従業員の給料どころか、そもそも雇い続けること自体が不可能になります。

いよいよビジネスが危うくなった時、株式会社は2つの手段でキャッシュを確保することができます。

金庫株の売却増資です。

金庫株の売却

「金庫株」とは自己株式のことです。

「自社株買い」という言葉を聞いたことがあると思いますが、自社株買いした株式の内、償却しなかったものを金庫株と呼びます。

つまり、会社が自社株の一部を保有している状態です。

詳しい説明は省略しますが、会社のキャッシュが枯渇しかけて経営がピンチになったら、この金庫株を市場で売却すればキャッシュを得ることができます。

この時、いくらのキャッシュを得ることができるかは、当然その時の株価に影響を受けます。

市場価格が1000円なら金庫株は1000円で売れますし、

市場価格が100円しかなければ金庫株は100円でしか売れません。

(話を単純にするため、自分が売却したことによる市場への影響は無視しています)

したがって、株価が高ければ高いほど、会社のピンチを乗り切るために必要なキャッシュを多く獲得できることになります。

増資

「増資」とは、新しく株式を発行して投資家に売却してキャッシュを得る方法です。

市場で一般投資家に告知して行われる増資は「公募増資」と呼ばれます。

増資をすると一株当たりの価値が下落するので、既存投資家には嫌われます。

会社の価値である時価総額は、「株価×発行済株式数=時価総額」という計算式で求められます。

例えば、

株価[100円]×総発行済株式数[100株]=時価総額[10,000円]

の会社が、経営がピンチになったので新たに100株を増資した場合、

株価[50円]×総発行済株式数[200株]=時価総額[10,000円]

となります。(※増資をしても時価総額は変わりません)

増資によって株価が下落したことがお分かりいただけるでしょうか?

実際はこんな極端な増資は行われませんが、増資をすると少なからず株価は下落します。

したがって、既存株主にとって、増資は嬉しいものではないのです。

しかしながら、企業にとってはビジネス存続のためのキャッシュを確保するための有効で合法的な手段です。

また、既存株主も、企業が倒産して株が紙切れになるくらいなら、増資してでも生き残ってくれた方が助かります。

増資の場合も、金庫株の売却と同様、株価が高ければ高いほど、企業は多くのキャッシュを得ることができます。

少し話を戻しますが、上記の通り、企業の経営が何らかの要因でピンチになった時、これらの手段を使ってキャッシュを確保することができます。

実際には銀行から借り入れすることもできますが、借金は返済する義務がありますし、利息を支払わねばなりません。

しかし、投資家から集めたお金は返済の必要がありません。

最悪倒産しても、ごめんなさいするだけで、損失は全て投資家が負ってくれます。(許す許さないは別として…)

しかし、もしも投資家を冷遇する政策が続いて、株を欲しいと思う人がいなくなったらどうなるでしょうか。

(実際には誰も株を買わなくなる状況はありえませんが、すごく減ったという意味で)

金庫株の売却にしろ、増資にしろ、その株を欲しがる買い手がいなければ売ることはできません。

株式投資の魅力が低下し、投資をしたい人が減れば、企業はピンチに陥った時に迅速かつ効率的にキャッシュを確保するのが難しくなります。

そんな状況では、賃上げどころではありません。

意欲のある投資家を確保するのは社会全体のタフさを維持する上で極めて重要なことなのです。

投資家を冷遇しながら、企業に賃上げだけを要求していくのは極めて難しいことがお分かりいただけたでしょうか。

まとめ

賃上げは良いことです。

投資家と企業がシナジーを起こし、ビジネスを通して経済を発展させる。

そして企業が十分なキャッシュを得て、そのキャッシュを使って賃上げをする。

これがとても健全な賃上げです。

しかしながら、投資家を冷遇し、

投資家と企業のシナジーを阻害し、経済活動が脆弱になっていく中で、

企業にとってのコストとなる賃上げだけを要求することは、

企業の安定的な経営を妨げる危険なことのように思います。

この記事は私が調べた中で、自分なりに株や投資の持つ意味を考えながら書きましたので、間違っていることもあるかもしれません。

個人投資家の一意見として見てもらえれば幸いです。

では、皆さんも充実した職場ディスカッションを!(笑)

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